アニメ化された漫画「BEASTARS」について、その面白さと私たちの世界に当てはめたときに考えさせられることについての記事です。
食文化の違いとかの話になるので敏感な人は読まないほうがいいかな?
ビースターズとは? 擬人化された動物たちの世界の話 モフモフ好きにはたまらん
『BEASTARS』(ビースターズ)は板垣巴留による日本の漫画作品。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店刊)にて2016年9月8日発売の41号から連載中。擬人化された肉食獣と草食獣が生活・共存をする世界を舞台に、全寮制の学校「チェリートン学園」へ通う動物たちの群像劇が描かれる。
wikipedia「 BEASTARS 」より
ビースターズの世界では、人間と同じように動物が文明を持って生活をしています。日本的な文化も一部取り入れられているほかに、車や拳銃といった機械文明もあります。ビースターズならではの世界観として、牛さんが自分の牛乳を提供したり、犬たちが自分の本能を解放して遊べるような施設だとか、随所に「動物の習性を人間社会の中で表現するとしたらどうなる?」というIFが描かれているところが面白いですね。
ビースターズを読んで最初に思い出したのが人間がもしいなくなったら世界はどうなるかを描いたIFの世界「アフターマン」です。人類滅亡後の5,000万年後の世界。人間以外の動物たちはどのように変わっていくのか。進化した動物同士の共存、共生、進化の過程まで細かく設定が考えられています。妄想もここまでいくとすごい。
さて、ビースターズの話に戻りますが、動物同士なら必ずしも言葉が通じるというわけではなくて水棲動物とは言葉が違うようです。ただ、外国語を覚えれば話せるくらいの感覚で描かれています。異種族間のいがみ合いがあるところ、血統主義が見られるところ等も人間社会の共通点といえるでしょう。
そして、私がビースターズを読んでいて最も引き込まれたのが、肉食動物と草食動物が共存する世界での対立と共生が描かれているところです。
レゴシとハルがどうなっていくかも面白そうですが、この記事ではもう少しマクロな話をしたいと思います。
ビースターズを私たちの食卓に当てはめて見える心理。魚=おいしそう。 牛=?
今回の記事ではビースターズで描かれる「肉食動物の本能」に注目します。
ビースターズの第1話で、普段は親しく接している草食動物を殺して食べる「食殺」という事件が起きます。
ビースターズは擬人化された動物たちの物語なので、ここでいう食殺はやはり人間社会でいうところの殺人にあたるのでしょうが、私は少し違うことを考えました。
自分自身、かわいいと思った動物を食べているよな、と。
牛、馬、鹿、羊など、牧場で見かければ「かわいい」と思う人は多いはず。でも食べてますよね。私は北海道に旅行に行ったとき、牧場の横にステーキハウスがあるのを見て少し複雑な気持ちにはなりましたが、ハンバーグはおいしかったです。特に肉を食べれなくなるということもありませんでした。
牛や馬などがかわいいと言いながら、その肉を食べて美味しいと思う矛盾について、人間の頭の中でどんな風な処理がされているのか、どういう風に自分を責めないで済んでいるのかということに興味があって、「心理 肉食」で検索してみました。
すると、「ミートパラドックス」という言葉が出てきました。
ざっくり説明すると、この矛盾は「自分が愛でている動物と、今、目の前の皿にある肉は別物だ」と思うか、「自分が愛でている動物は知的で特別だが、食べている動物は知的に劣っているから苦しくないはずだ」という解釈をしている、という説が有力のようです。
自分に問いかけてみて、納得できる部分とできない部分がありました。牛や馬などを食べることについては前半の「別物だ」と考えるのであれば納得できます。一方、「知的に劣っているから苦しくないはずだ」とは考えたくないです。それを認めるということは、自分が酷い生き物だと認めることだと思うからです。
さて、それでももう少し深く突っ込んでみましょう。魚やエビやカニはどうでしょうか?日本人の文化ではよく食べられるものです。しかもこれらの場合、私は生きて泳いだり動いたりしていても「おいしそうだな」と思います。
魚なら頭に箸を突っ込むことにも抵抗感はありません。煮物なら目玉も食べる派です。
カニなら脳みそだって食べます。お手軽にカニ味噌軍艦を食べることも。
イカの踊り食いもしたことがあります。口の中で吸盤がくっつくのはびっくりしますが、見た目は透明感がキレイだし、歯ごたえあってイケます。
そして、ここで思うのは、魚やエビやカニやイカに同情したことはない、ということです。
これって知的に劣っていると思うどころか、魚などが考えているとすら思ってないんじゃないでしょうか。そして牛や馬などの場合に比べて、魚など知的に劣っているという見方をしているという説に反論する気もほとんど起きない。だってそうじゃん、くらいです。
この違いはどこから来るのでしょうか。
牛や馬と違うのは、そのままの形で食卓に並ぶかどうかですよね。
あと、同じ節足動物でも陸上の生き物、イナゴとかサソリとかがそのままの姿で出てきたとしたら、私は食べる気にならないと思います。小エビなら美味しく食べれるのに。
牛や馬以外にも、人間はいろんな動物を食べていますね。私の知っている限り、日本だけで考えてみても牛、馬、羊、鹿、猪、豚、鶏、うさぎなどなど、あまり食卓に並ばないものもありますが、私はどれも食べた事があります。
え、鹿!?かわいそう! とか、え?ウサギ!?かわいそう! とか思う人も同じ日本人でもいると思うので、結局は子どもの頃から何を食べるかで食に対する価値観がほぼほぼ決まるんですかね。
ところで、実際に牛や馬、あと豚などの屠殺の工程を見たことがある人というのは 少ないのではないでしょうか。私は今のところ進んで見たくはない、くらいの感覚です。
肉食の良し悪しを語る気はありませんが、今回の記事を書いていて、食べるならその過程やありがたみをちゃんと知っておくべきかな、と私は思いました。見る勇気がまだ沸かないんですが。見ると食べれなくなる可能性もありますしね。
屠殺の過程を見たあとに自分は牛肉を食べれなくなるのか、それとも生きている状態を見ても「おいしそう」と思うようになるのか、そのときの自分の心理に興味があります。
少し話がずれますが、私は最近革細工、レザークラフトをし始めました。
生き物からの革でモノを作るからという意味でも、いずれ屠殺から皮を剥ぐまでの工程をちゃんと見ておきたいと思っています。それはまた別記事ででも。
サステナビリティ的には肉食は今後、消費が減る方向と予想。でもなくなりはせず、ビースターズで言うとこの裏市っぽいのができそう?
私が個人的に興味を抱いているのは「菜食主義者の急増」である。
平瀬 錬司 サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役 CEO
最近、菜食主義になる、あるいは部分的に肉食を減らすという方が増えてきているそうです。
菜食主義といってもさまざまで、主に3段階あるとのこと。
・ヴィーガン: 動物由来の蛋白質(肉、魚、卵、乳製品)を食べない。カツオだしもNG。
・ベジタリアン: 肉を食べない。
・ローミート: なるべく菜食にする
また、この菜食主義が増えてきている理由はこういうところがあるそうで。
「健康のため」
「地球温暖化緩和のため」
「環境のため」
「省エネルギーのため」
「節水のため」
他にもミートレスマンデー、なんていうのもあるんですね。週に1回、月曜日だけ肉を食べない、とか。
大豆や小麦など、植物由来の蛋白質を主成分として作られる「人工肉」「植物肉」と言われるものも出てきています。
国単位の動きとして興味深いのがデンマーク政府の肉への課税検討です。
https://www.econetworks.jp/internatenw/2016/05/wri-report/
肉税- 環境にも健康にも悪い「肉」には課税を
https://www.hopeforanimals.org/meat-free-monday/566/
色々並べましたが、調べてみると「動物肉を減らそう」という動きは確かにあるようです。
サステナビリティ(持続可能な発展)が企業にも求められる時代ですので、中小企業までは浸透しないにしても、大企業の役員クラスになると表向きに「肉が好きです」とは言いづらくなるかもしれませんね。
そうなった時に本当は食べたいという人は、隠れて肉を食べるようになるのかなぁ。そうすると少しビースターズの世界の裏市に近い感覚になるのかもしれません。
ということで、ビースターズを読んでいろいろ考えさせられたよ、というお話でした。
レザークラフトに興味がある方はこちらもどうぞ。
ではまた。
コメント