環境心理学を学んだ筆者が、コンサルの依頼を受けて実際に調査をした中で得られた知見を書籍にまとめたものです。
この記事では特に「人の顔と名前の記憶」に焦点を当てて書きますが、他にも「経済的な理由、あるいは社会での地位を取り戻したくて共働きを選んだお母さんの隠れた欲求」「事務職の生産性向上の手法」など、2011年に発行されたとは思えない、2020年の今だからこそ必要な情報がたくさん盛り込まれています。
・人の顔と名前が覚えられない人は必見。ホテルマンのスキル継承というテーマで語られる、どの分野でも役に立つテクニックを知る事ができます。
行動観察、とは? 人間観察により隠れたニーズを掘り起こす手法。
行動観察は言語化されていないニーズやノウハウを抽出しマニュアルに落とし込むことができる学問である
ビジネスマンのための「行動観察」入門 (講談社現代新書) – 2011/10/18 松波 晴人 (著)
観察によって得るものであるため、社会通念上良しとされないような行動や、無意識下にある欲求であっても抽出することができるのがポイントです。
行動観察をしていれば見えてくるものがある、という場面として「ワーキングマザー」「書店」「人材育成」「営業スキル」「人材育成」「オフィス」「工場」など多くの事例が出てきます。
顔と名前が思い出せない・・・人を覚えるのにはコツがある
この中で私が一番着目して読み込んだのは、あるホテルマンの事例です。
ホテルにやってくる車を見て「次は○○様が来られるので準備して」と指示を出したり、しばらく来られなかったお客様に対しても名前を呼んで接したりすることができるいわゆる「プロの接客」をする従業員がいて、このテクニックを人材育成に盛り込めないか、というものです。
情報を吸収し、必要なときに思い出すという工程が彼の頭の中でどのように行われているかというのは行動観察だけでは見えませんが、彼がどのような習慣でお客様の情報を頭にインプットしているかという流れが本人へのヒアリングによって明らかになっていくと、驚くほど人の脳の仕組みから言って効率的な覚え方をしているということが分かっていきます。
・人の顔と名前を覚えるのには、適した方法がある。
詳細はここでは述べませんが、人には「記憶しやすい状況」「記憶しやすい時間帯」「思い出しやすい覚え方」があり、仕事に対するモチベーションが高いことでこれらの記憶術を実行できる、という話でした。これは接客業に限らず使えるテクニックだと思いますので、人の顔と名前を覚えるのが苦手だという方には是非読んでいただきたいです。
まとめ 君は観察していない。ただ見ているだけだ。
筆者はどうやら、コナン・ドイルの小説に出てくるシャーロックホームズが好きなようです。ホームズの有名な言葉を引用して、「君は観察(observe)していない。ただ見ている(see)だけだ。私が言いたいのは観察するのと見るのとは全然違うということだ。」と言っています。人の顔と名前をどうやって覚えるかと言うことに限らず、観察をすることで見えてくるもの、学べるものがあるということだと思います。
また、筆者の恩師として、コーネル大学のゲイリー・エヴァンス環境心理学教授の言葉が出てきます。
「私は君達の知らないことをたくさん知っている。だからこの講義を通じて色々とお話したい。そして、君たちは私の知らないことを知っている。それをぜひ私に教えてほしい。」自分より圧倒的に若い学生からも学びを得ようとする態度、自分の考えや価値観はさておき事実や他人の思いに対して謙虚であるべきである。
ビジネスマンのための「行動観察」入門 (講談社現代新書) – 2011/10/18 松波 晴人 (著)
これを見て私が思ったのは、素人だってちゃんと観察していれば見えることがあるのかもな、ということです。
妻が子どものご飯より自分のご飯を出すのを優先してくれているな、とか。
お風呂のとき、入る順番でタオルを並べてくれているな、とか。
子どもが寝た後、おもちゃをちゃんと片付けて部屋をリセットしたいんだな、とか。
事実や他人の思いに対して、謙虚でありたいですね。
そして、当たり前と思わずちゃんと感謝を示して、行動で返すようにしたいです。
タイトルはビジネスマン向けですが、誰にでもオススメできる本です。
それではまた。
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