【ストーリー】
もしもあの夜迷い込まなかったら少年はまだそこにいたのかもしれない
熱が下がったらサーカスに行くはずだった そして雨が降り出した
その雨は透明の少女を連れてきた
二人の視線が重なる
彼女は瞳が何を訴えているのか
その雨は透明な少女を連れてきた
雨によって 浮かび上がる少女と影
少年は雨の街に走り出す
角を曲がり現れたのは
あの夜へと続く光の扉だった
二つの影はその扉を通り抜ける
そして少年も入っていく
あの夜へと
この入り方が良かったねー。小説を読んでいる気分になる。小説自体は好きなのだけれど、ゲームとしてこういうタイプのものはあまりやったことがなかった。なので、定額制のPS now だからこそ選べた、という印象です。
小説を読みながらキャラクターを動かして、世界観に惹かれるような作り。ゲーム中はずっと雨が降っていて、世界はどんより暗くなっている。どことなく不安になるような、子供の頃にこのまま雨が降り続けたらどうなるんだろうと心配に思ったような、そんな気持ちを再現したような世界。
【グラフィック】
水彩画でのオープニングは世界観に合っていて良い。どっぷりとストーリーに浸らせてくれました。
ゲームの方は視覚的にも面白い。雨がないところにいると少女に気づいてもらえないもどかしさとか、影に追われている少女を助けたり、気づくとどっぷりとはまっていた。少年も少女も喋れないが、時折小説のようなテキストが浮かんで情景を伝えてくれるところも良かったですね。
【操作性、システム】
ノベル系のゲームかと思いきや3 Dの TPS?アドベンチャーの分類になるのかな。
主人公の少年はメタルギアで言うところの「ステルス迷彩」みたいに透明になってしまう。ただ、コントロールできるものではなくて、雨が降っているところでは姿を見られる雨が降ってないところが安全地帯というシステム。
アクション+謎解き要素があって、敵である影を上手く誘導して障害を乗り越えるというストーリーになっています。ステルスで進んで 敵を直接倒すのではなくて、逃げたり罠にひっかけて 目的地までたどり着くというものでした。歩く、走る、小さな台の上に乗って 障害を乗り越える、扉の開け閉めをする、といった単純なアクションしかないですが、その組み合わせによって 頭を使いながら先に進んでいくようになっています。
泥水がたまっているところがあり、そこは歩いてしまうと 雨が降っていないところでも泥が見えてしまうため影が追ってくる。また、物を持ち上げても物自体は雨が降ってない所でも見えるので影が追ってくるというのも頭を使うところ。それから、全身泥水濡れてしまうと体ごと水に浸からないと泥が落ちない。どういうルートで歩いていくかを考えて、チャプターをクリアするとほっと一息つくような展開になっています。
チャプターは細かく刻まれていて、セーブはいつでも可能だけど、チャプターごとに区切られていてやり直すときはチャプターの最初から。
後半、操作に慣れてくると少女の足の遅さが気になっていました。置いていくと親密度に影響するかなと思ったりもしましたが、特にそういうシーンも見られなかったので大丈夫かな?別ゲームですが、「ICO」のように近くに走っている時は手を繋げるとかあっても良かったかも。まぁ、「ICO」やったことないんだけどね! もしくは手をつなぐと元々の少女の速さよりも若干早く走れるとか?捉え様ですが、少女の足が少し遅くてやきもきするくらいがストーリーとしては面白いのかもしれませんね。
まさかの周回要素(以下、ネタバレありますので嫌な人は気をつけてください。
クリアして終わりかと思いきや、一度クリアすると「記憶」に会えるようになります。確かにストーリー的に分からないところも多かったもんね。
光の中で影があまり苦しそうではないシーンがあったのはなんでだろう、とか。少女が意識を失った時に雨が止んでいるのは少女と関係があるのだろうか、もしかして夢の中? 幽体離脱とか?といろいろ考えさせられる場面はありました。
オープニングで少女と影が出てくるシーンがあるけれど、扉を潜って別世界に行く前なので、少女と影が追いかけっこをしているはずはないんですよね。でも、少年はその少女と影を追いかけて扉を通り、影の世界を目撃することになる。うーん、謎。
作中、サーカスというのがけっこう大事な位置を占めている描写もありました。影の世界の檻は、サーカスの檻を表しているのかな。
サーカスに行きたかったなという少女の思いと、サーカスで少女に会いたかったという少年の気持ちが通じて影の世界で出会った、とか?
影が恐ろしく描かれているのは外の世界や動物に対する少女の恐怖心からかな。
さて、そんなわけでストーリー考察ができるように「記憶」という光の玉を集めてくれというわけですね。chapterを選べる配慮もされているのはこのためでしょうか。
手に入る「記憶」と考察
01:夜明け
彼は明るい朝に生まれた
両手が太陽をしっかりと掴み、
世界がそこに存在することを感じていた
02:夕焼け
彼女は夕日を感じながら生まれた
やさしい光が部屋を満たし、
夜になる事を、信じてもいなかった
03:町の記憶
町はその朝日と夕日を覚えていた
まぶしい光の後ろに、
夜の気配を感じてしまったから
登場人物紹介。実は少年と少女だけではなく町も活躍するよ、みたいな。
また、先に夜に囚われるのは夕方(少女)で、朝(少年)もいずれは夜になることを示している。
少女が、夜が明けること(朝日)を望んでいたことも表している。…とか?
04:世界の広さ
彼は小さな世界に暮らしていた
自由に動き回るには少し狭くても、
心地いい窮屈さが包んでくれていた
大人になるとそうでもないけど、子どもにとって町=世界なんだよね。このゲームをやっていて面白かったのは、子どもの頃こんなこと考えてたなーとか、思い出させてくれるところです。
05:世界との距離
彼女はいつも窓の外を見つめていた
絵のように切り取られた世界も、
不思議と退屈に感じなかった
家から出られない事情があった。怪我?病気?咳き込むシーンがあったことからすると喘息のようなもの?
06:予感
町は不安げに見守っていた
遠くから夜が押し寄せ、
二人を覆い隠そうとしていたのを世界を、でも町を、でもない。
二人を、覆い隠そうとしていた。
フラグ、ってやつですかね。これから悪いことが起こるよー、みたいな。
07:横顔
彼はサーカスを待って、広場に座っていた
ゆっくりと落ちて来た帽子に気が付き、
小さな窓に小さな横顔を目にした
08:風
彼女はまだ被ったことのない帽子と遊んでいた
風がそれを広場へと運び、
誰かが座っているのを見つけてくれた
09:出会い
町は風を吹かせていた
二人が出会うように、
一人で迷子にならないように
町のファインプレーその1
あらかじめ二人を会わせる。
10:変化
彼は知らなかった
彼女がサーカスに来ない事を、
彼女に朝が来てくれない事を
彼女に朝が来ない→先に夜の世界に囚われるのは少女の方。
11:迷子
彼女は迷子になってしまった
どこを歩いても、誰を探しても、
そこには誰もいない夜しかなかった
このとき雨は降っておらず、自分の姿は見えない。
少女は表の世界では引きこもっているとはいえ、非常事態には外に出ざるを得ない。怖いぃー。
12:景色
町は見失ってしまった
いつもの景色から消えてしまった姿は、
どこにも見当たらなかった町が、少女がいなくなったことに気づいた。
他もそうだけど、町はとことん少女の味方。
13:気配
彼も窓の外を眺めるようになった
遠くに聞こえる賑やかな音楽が、
心を沈ませてしまった
窓から見える世界が別世界という発想があるのかな?
窓から外を見ながら心を沈ませていくことが、夜の世界に迷い込む条件?
少女は窓から見える景色に満足していたけど、何らかの事情で家から出られず、少年に会えないことに心を沈ませていた、とも考えられる。
14:消えていく輪郭
彼女は多くを忘れ始めていた
失っていく色々な事を思い出すために、
彼女を待つ人達の所へ戻ろうとしていた
長くいると元の世界のことを忘れてしまう。自分のことも?少女の体調が悪そうだったのはこの事かな?
15:雨を迎えに
町は雨を迎えにいった
止まない雨は彼女を寂しくさせてしまうとしても、
本当の事を思い出すために、今は必要だった
自分の姿が見えない→自分のことも含めて忘れてしまう。
雨が降って自分の姿を認識できることが必要。雨によって暗く寂しい気持ちになるとしても。
16:夜へと
彼も夜に呑み込まれていた
暗闇が自分の事をさらっていったのに、
まだ気が付かず、彼女の影を追いかけていた
暗闇が自分のことをさらっていった→少年は窓から出たつもりだったが、出たのは少年の意識だけだった。家族は窓辺で寝たものと思ってベッドに運んだ?
冒頭、少年は熱を出しており、熱が引いたらサーカスに行く予定だった。熱に浮かされて思考が妙な方向にいくのは経験がある人もいるだろう。これが少女のいる影の世界に近づくきっかけとなった?
17:灯り
彼女は夜から逃げ出す灯りに気がついた
でも、一人で逃げ出すのではなく、
二人で抜け出す朝を探し始めた
少女がベッドで寝ている自分の体を揺すったときに気づいた。寝ている自分が起きれば、今の自分も目を覚まして戻れるということに。
でも今起きると少年が一人になってしまうと躊躇した。優しい。
18:浮かび上がる輪郭
町が雨を降らせていた
彼女が道を見失わないように、
彼が彼女を見つけられるように
彼女が多くのことを忘れて、帰る場所も分からないなんてことにならないように。
少年が夜の世界に行ったのはイレギュラーだったのかなと思っていたけど、これ町が少年を引っ張り込んだ可能性あるな?町の構造的に2人いないと出口にいけないわ、丁度いいやつがいたから巻き込んでしまおう、みたいな。
19:暗闇
彼を閉じ込めようと暗闇が追いかけていた
夜は心の小さな隙間に入り込み、
彼を支配しようとしていた
巻き込まれた少年涙目。
でも少女を見つけてテンション上がる。
20:夜の裏側
彼女は夜の本当の姿に気がついた
逃げるだけでは、決して抜け出せず、
そこから追い出さなくては、自分達の夜に戻らない事に
影を扉から追い出そうとしていたことの説明をしているようで説明になっていない部分。結果的には追い出したものの扉から影は戻って来ちゃったし、少年が押し潰されないように少年を元の世界に戻すことができたし、少年が起こすことで再度影を扉から追い出さなくても少女もまた元の世界に戻ることができた。うーん…
21:光
二人を蝕むように町も支配されていた
月明かりさえ、もうそこには届かなかったが、
小さな隙間から昼の光を二人のために届けた
22:目覚め
彼女が夜を終わらせてくれた
闇に取り残される覚悟をしてまで、
彼の心を呼び起こしてくれた
最初に少年から離れていったときは「え?(゚д゚)」ってなりましたけどね。
頭の回転良いですわこの子。
23:朝を待つ
彼が来てくれるのを彼女は待っていた
二人が走り抜けた暗く寂しい夜は、
朝を迎える間際のように静かになっていた
どこで待ってたんだろうとか、影に追いかけられなかったの?とか疑問はあるけど、24と合わせて考えると、町が雨をやませて少女の姿を見えなくした可能性もあるか?だから朝を迎える間際のように静かになった、ということかな。
24:夜明け
町は見守る事しか出来なかった
雨はすでに上がっていたが、
もう二人が迷うことはなかった
少年と少女は目を覚ました。
町がしてあげられることはもうない。
もう雨がなくても姿は見えてるから!
よかった、ハッピーエンドや。
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